出産レポ②「お母さん、ありがとう」と言ってくれた日

なつみ

彩葉が生まれたあと、

陽向と心結が、分娩室へ会いに来てくれました。

部屋へ入ってきた瞬間、

陽向がさらっと、

「お母さん、ありがとう。」

そう言ってくれました。

そのあと、心結も、

「お母さん、ありがとう。」

と言ってくれました。

そのときの私は、出産を終えたばかりで、

ほっとして、

興奮して、

周りもバタバタしていて。

「どういたしまして〜!」

くらいの感じで返した気がします(笑)

もちろん嬉しかったけれど、

その言葉をゆっくり受け取る余裕は、
まだなかったのだと思います。

でも後日、

隣の分娩室で一緒に出産を頑張っていたお母さんから、声をかけてもらいました。

「私、たぶん隣で陣痛に耐えていたんです。」

「お子さんたちが面会に来ていましたよね?」

「お部屋に入るときに、“お母さんありがとう”って言っていて……。」

その言葉を聞いて、

とても感動したこと。

自分も頑張ろうと思えたこと。

兄弟をつくってあげたいと思ったこと。

そして、

「本当に素敵なお子さんたちですね。」

そう伝えてくれました。

その話を聞いて、私は初めて、

「あの言葉は、本当に素敵なことだったな…。」

と、あらためて気づきました。

私に向けられた、何気ない自然な「ありがとう」が、

壁の向こうで頑張っていた誰かの心にまで届いていた。

あの日の陽向と心結の声を思い出して、胸がいっぱいになりました。

あとから、ばぁばにも、その日の話を聞きました。

その日は、陽向と心結は、ばぁばの家に泊まっていて

朝方に彩葉が生まれて、

「5時までに来られたら、今なら会えるよ。どーする?」

とパパが連絡しました。

ばぁばが陽向に、

「赤ちゃん生まれたって。見に行く?」

と聞いたら、

すぐに、

「行く!」

と起きて、ひなたは準備を始めたそうです。

みゆよりも早く、
とても楽しそうにしていたと聞きました(笑)

思春期に入り始めた中学生の男の子が、

眠い朝にすぐ起きて、

妹に会うことを楽しみに準備してくれていた。

その姿を想像しただけで、

なんだか、とても嬉しくなりました。

陽向には、これまでたくさん心配をかけてきました。

寂しい思いも、

悲しい思いも、

不安な思いもさせたと思います。

シングルだった頃。

再婚したばかりの頃。

私自身にも余裕がなく、

怒ってばかりで、

苦しめてしまった日もありました。

それでも、

大好きだと伝えたり、

間違えたときには謝ったり、

うまくできないながらも、

何度も一緒に向き合ってきました。

「これでよかったのかな。」

「私は、この子をちゃんと大切にできていたのかな。」

心のどこかで、

ずっと不安だったのだと思います。

でも、

あの日。

妹に会うために飛び起きて、

分娩室へ入った瞬間に、

自然と出てきた、

「お母さん、ありがとう。」

その言葉を思い返したとき、

心の底から思いました。

「大丈夫。」

完璧ではなかった。

傷つけてしまったことも、

寂しい思いをさせたこともある。

それでも、

大好きな気持ちを伝えながら、

一緒に悩んで、

一緒に歩いてきた時間は、

ちゃんと陽向の中に残っていた。

だから、もう少し信じてみよう。

陽向のことも。

心結のことも。

私たち家族が積み重ねてきた時間も。

そして、母親としての自分のことも。

大丈夫。

そう思えた出来事でした。

彩葉が生まれたことで、

新しい家族が増えただけではなく、

これまで家族で歩いてきた時間まで、

やさしく照らしてもらえた気がします。

陽向の「ありがとう」。

心結の「ありがとう」。

隣の分娩室まで届いていた、その声。

彩葉に会うことを楽しみにしていた二人の姿。

あの日は、

命が生まれた日であると同時に、

家族のつながりを、もう一度信じられた日でもありました

いろいろあったけれど、

向き合ってきてよかった。

大好きだと伝え続けてきてよかった。

この家族でよかった。

本当に、いい時間だったなと思います。

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